樹は自分のシートにストンともたれ、小さく息をついた。
「なんだ、知ってんのか」
前を向いたままポツリとつぶやく。
それから指先でトントンとハンドルを叩き、
「トラック乗ってんだろ? 今日のは本当だ。山梨から今帰ったとこ」と言った。
「だから美里と部屋にいたのは俺じゃないよ」
「どうして……ウソをついてたの?」
樹の顔がこっちを向き、その目が再びわたしに注がれる。
「仕事クビになったって知ったら、お前が不安になると思った」
「またわたしのせい?」
悲しくって、目に涙がいっぱいになる。
「逆だよ、樹。美里さんのことでも仕事のことでもウソばっかつかれて、わたしがどんなに不安だったかわかる? 樹のこと信じられなくなって、悲しくって悔しくってひとりぼっちで、もうどうしたらいいのかわからなくなったんだよ……!」



