「いつから見てた……の?」
声が震えそうになるのを必死で抑えながら訊いてみた。
「お前と大淀がお手てつないでラブホテルから出てくるとこから」
最悪の答。
車が赤信号で止まり、樹の顔がゆっくりとこっちに向けられる。
茶色がかった澄んだ瞳が、真っ直ぐにわたしをとらえた。
「どっかの知らない女かと思った」
初めてそんな冷たい声を聞いた。
初めてそんな冷たい目で見られた。
信号が青に変わり、車がまた走り出す。
心臓がバクバクして、言葉がうまく出て来ない。
でも話さなきゃ。
ちゃんと説明しなくちゃ……。
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