「え、うん」
「お前は?」
樹が大淀を見る。
「俺は、」
「大淀は今から塾だから自分で帰るって」
力のこもった目で樹を見あげる大淀の言葉を遮るように、わたしは言った。
これ以上迷惑はかけらんないもん。
舗道側に戻り、助手席に乗り込もうとするわたしに、大淀が心配そうにささやく。
「お前いきなりケンカ腰じゃん。大丈夫かよ?」
「大丈夫。ちゃんと話すから」
一生懸命笑顔を作った。
わたしがシートに座ると、樹は無言でトラックを出す。
二人とも何も言い出さない。
長い沈黙――。
「なんかの、見まちがい?」
やっと樹が口を開いた。
フロントガラスの向こうを見つめたまま発せられる低い声に、胸が押しつぶされそうになる。



