「わたし泣かないから……。好きにしていいよ」
ゆっくりと顔を上げた大淀の目が、じっとわたしに注がれる。
息苦しいほどの沈黙。
―――わたしは自分で目を閉じた。
大淀の指先がわたしの頬に触れて……。
樹とはちがう唇。
樹とはちがう感触。
樹とはちがう温もり。
「好きなんだ、上野……」
樹とはちがう声がささやいた。
ツー……と、頬に涙がつたうのが自分でもわかった。
どうして大淀とキスしてるのに
樹のキスを思い出してしまうの?
どうしてこの場にいない人なのに
こんなにも存在を感じてしまうの?
ゴメンなさい、大淀。
わたしサイテーだ……。
と、そのとき、大淀の手が動いて……。



