国道沿いをしばらく歩いて、わたしたちは知らない町を行く。
歩きながら、ただぼんやりと樹のことばかりを考えていた。
中2から中3に上がる春、初めて出会ってから、ずーっと好きだったこと。
彼女になれてうれしかったこと。
つきあってからもドキドキすることばっかだったこと。
目いっぱい背伸びしたのに、結局キスしかしてもらえなかったこと……。
「あったけど、どーする?」
ふいに大淀の声がして、思考が停止する。
顔を上げると目の前には、ヨーロッパのお城調なラブホテルが、周りの景色から完全に浮いて、そびえたっていた。
うわ……。
大淀が無言で、わたしの返事を待っている。
「う、うん、いーんじゃない?」
なんて答えていた。
かなり動揺している。



