言ってくれなかったのはテスト中だから?
それともなんて言おうか困ってた?
優しい笑顔を思い出す。
『真琴』と呼ぶ声を。
あったかくて大きな手を。
その手は今、誰に触れているの……?
イヤだよ、樹。
かなり覚悟していたつもりだったのに、覚悟なんて全然できてなかった。
メチャクチャに走って
それからガツッと、舗道のでっぱりにつまずいて転がった。
「イタ……」
道の片隅に小さくなってうずくまる。
涙すら、出ない。
「上野」
突然降ってきた声に驚いて見あげると、肩で息をする大淀が立っていた。
はっ、忘れてた。



