ドクドクドクドク。
心臓がイヤな音をたて始めた。
美里さんは窓から身を乗り出し、細い腕を伸ばして、ピンクのバスタオルを物干し竿にかける。
それから部屋の中を振り返って、笑った。
誰かと……しゃべってる。
誰か……。
ドクドクドクドク。
美里さんの体が一瞬室内に消え、すぐにまた姿を現したとき、バスタオルをもう1枚、彼女は手にしていた。
大きくて真っ白なバスタオルをバッと広げ、それをまた竿にかけている。
両端を洗濯バサミでとめると満足げに微笑み、美里さんは明かりの中へと姿を消した。
カーテンが引かれ、光の帯は閉ざされる。
ドクドクドクドク。
ドクドクドクドク。
動けなかった……。



