樹のアパートに着いて、まず2階の手前の窓を見あげる。
グリーン系のカーテンの向こう側に明かりが灯っているのがわかった。
「いるじゃん」
大淀がつぶやく。
樹が会社を辞めたことも、長距離の仕事で家を空けると言われていたことも、ここへ来る途中大淀に話していた。
「行って来いよ」
階段のほうを顎で示しながら、大淀が促す。
「え、ついてきてくれないの?」
すがるように訊くと、大淀は「俺はここまで」と言った。
で、でも、部屋にいるのが樹だけじゃなかったらどうする?
呼び鈴を押して美里さんが出てきたらどうするの?
こーゆーのを『修羅場』って言うんだよね?



