わわ……。
今度はわたしが大淀の手を引っ張ってアパートの陰にまわり、身をひそめた。
「だから、なんで隠れるんだよ」
「だって……」
ちょうどそのとき、アパートの前にピンクの軽自動車がとまった。
あ、あれは香美さんのだ。
車を降りた香美さんと祐二さんが、階段を下りかけている樹たちと大声で言葉を交わす。
「ちょうど良かった。今から鍋の材料買いに行くとこだ」
樹の声が降ってくる。
「もう買ってきたよ~」
両手にスーパーの袋を掲げる香美さん。
「押しかけて悪いな、樹」と祐二さん。
「いーけど、この部屋すげー狭いぞ」
笑って答える樹の横で、美里さんが
「すげー狭いぞ」
って、可愛く繰り返した。
樹に頭をこづかれて、肩をすくめているのが見える。
ム……。
完全に彼女のポジションじゃん、それ。



