朝が待てなくて


ちょうどわたしたちが隠れている木の向こう側で、樹は美里さんと向かい合った。


顔はよく見えるんだけど、会話までは聞こえてこない。




彼女と少し言葉を交わしたあと、樹はジーンズのポケットから何か取り出して、確かめるみたいに自分の手の中に視線を落とした。


それから「ん」って感じで、それをぶら下げるように美里さんの目の前に突き出す。


チャラリ……と揺れたそれは



あ……鍵?




驚いたようにそれを見あげる美里さんの目が、みるみるうちに涙でいっぱいになる。


照れくさそうに、樹は顔をクシャッとさせて笑った。


美里さんは突き出された樹の手ごと、両手でそれを包みこみ、その手にコツンと額を寄せた。




たぶん「ありがとう」って、泣いている。