「新聞とか、ちゃんと読むんだ?」
向かいの席に座りながらそう言うと、樹はサッとそれをたたんで横へやった。
「当たり前だ。おれは大人だぞ、バーカ」
ん?
だけどテーブルの横ちょにやられた新聞を手に取ると、たたみ方が雑で、さっきまで樹が読んでいたページがすぐにわかる。
「あれ? 求人欄じゃん、これ」
「…バレたか」
ヒャヒャッと樹が笑った。
「えっ、仕事やめちゃうの?」
ビックリして身を乗り出すようにして訊いたら、「オーダー」と樹が言った。
「へ?」
「オーダー取りに来てる」
ああ、黒いカフェエプロンを腰に巻いたお姉さんが、テーブルの横で小首をかしげている。
「えっと、クランベリージュース」



