振り返った樹は、そのぎこちない笑顔のままで、わたしに笑いかける。
「ゴメン。遅くなっちゃったな」
ううん、と小さく首を横に振った。
「いいの? 行かなくて」
「え?」
「病院とか警察とか、ついていてあげなくていいの?」
返事がこわかったけど本気で訊いた。
「ああ、香美が行くからいいんだ」
一瞬戸惑った顔をして、それから樹はそう答えた。
ホントかな?
美里さんは樹にいてほしいはずだよ
肩を抱いていてほしいと願ってるよ。
だってあんなに震えていたんだよ。
樹と並んでトラックへ向かいながら、背中に感じる彼女の視線が痛かった。
ギクシャクと歩いていたら
不意にグイッと、樹がわたしの肩を抱き寄せた。



