「……う、う」 彼の腕の中で、美里さんが嗚咽をもらす。 ひとりで必死に抑えていたものから、やっと解放されていく。 その腕の中がどんなに安心できる場所なのか、わたしにはわかるよ。 樹の背中にまわされた細い腕。 指先が、ギュウッと、彼のシャツをつかんでいた。 震える彼女の小さな肩を 大きな手のひらが支えている。 「痩せたな」 樹の唇がそう動くのを、わたしはぼんやりと見ていたんだ……。