軽く敬礼をし、警官はパトカーで引きあげて行った。 残された二人は…… ただ黙って向かい合っている。 まだ微かに震える美里さんを見つめたまま 金縛りにあったみたいに突っ立っている樹。 その彼が一歩踏み出し、 彼女の体をそっと抱きしめるまでが、 スローモーションのようだった――。 それは静かな抱擁で、 樹の心臓の音が 聞こえるような気がした。