大淀は何も言わない。
「早く振られろ」的なことも言ってこなくなった。
てか夏休みは会わなかったし、新学期が始まってからもあまり口をきいてはいない。
席も遠いし、その遠い席にいる大淀と、ときどき目が合うくらいだ。
目が合うと、大淀は黒目がちの瞳をそらさずに、じっと見てくる。
5秒くらい視線が絡んで、わたしのほうからそれをはずす。
見つめられて動揺しているのがバレバレで、なんか悔しいから、この前はアッカンベーってしてやった。
そうしたら大淀は一瞬面食らった顔をして、それからゲラゲラと一人で爆笑していた。
あれ? こんなふうに笑うやつだったかな?
なんて思ったけど。
そう言えば、新学期久し振りに大淀を教室で見たとき、ずいぶん日に焼けて大人びて見えたっけ。
なんだかちょっと、ドキッとしたんだ。