樹はそんなことには気づかずに、コホンと小さく咳をして、わたしの頭に大きな手のひらをのっけた。
「朝、早かったもんな」
「え」
「テニス部の練習キツイんだろ?」
「ああ、今日のはちょっと長かったから」
彼の指先が優しく髪を撫でる。
「無理…させちゃったな」
「……べつに。わたしが勝手に来ただけだもん」
ゴメンね、樹。貧血なんてウソだよ?
樹の部屋へ行きたかっただけ。
朝みたいなキスをしてほしかっただけ。
その指で触って
美里さんにしたのと同じことを……
わたしにもしてほしかっただけだよ。
メニュー