朝が待てなくて


「あ、じゃ、わたし行くね。お母さん待ってるし」


美里さんが立ち上がり別れを告げる。


「もうちょっと話してけば?」


彼女を見上げてそう言いながら、樹の目が一点にとまった。


……?


ピアスを確認するように、何気なく耳たぶにさわった彼女の腕から、シフォンのブラウスの袖がずれ落ちる。


そのひじから手首にかけて、赤茶色く変色した大きなあざがあった。




「それ、なんの怪我?」と樹が訊く。


「え、階段から落っこちた」


あわてて低い声をかわすように、美里さんはぎこちなく笑った。