「ゴメーン。そんなこと、わたしに言われたらやだよね」 きれいな顔が苦笑している。 「……でも、見つけたんでしょ?」 そんな美里さんに、わたしはやっとの思いで言葉を向けた。 「え?」 「樹以上の人を見つけたから結婚したんですよね?」 そうじゃないと困る。 そうじゃなくなってたら困る。 美里さんが結婚して手の届かないところへいってしまったから、樹はわたしとつきあってくれたんだと思う。 そこからわたしたちは始まったんだから、今さら『樹以上の人はいない』みたいなこと言われたら本当に困る。