「あ、どうぞ。よかったら座って下さい」
仕方ないもん。ぎこちないしぐさで席を勧めると、美里さんは「ゴメンね」って、樹の側ではなくわたしの横にちょこんと座った。
「母と妹と来てるの。樹が帰って来たら挨拶して、すぐ席に戻るからね」
優しい笑顔が申し訳なさそうになる。
「いえ、大丈夫ですから……」
「わたし、樹の高校時代の友人で愛内美里っていいます」
「あ、上野真琴です。4年間……樹とつきあっていた方ですか?」
知っていたけどわざと訊いた。気まずくなったっていいもん。
そーゆー人がいたって知ってます! 樹から全部聞きました!って、言いたかったのかもしれない。



