「え、……美里か?」 「うん、久し振りだね。…ひとり?」 「いや、デート中」 樹とその人は見つめ合ったままで小さな間があり、それから彼女が朗らかに言った。 「あっ、すごーい可愛い彼女ができたって、香美から聞いてるよ」 「うん」 「その子に夢中なんだって?」 「うん」 樹…… 否定しないの? 「あ」 3歩が進めなくなって固まっているわたしに気づいて、樹が小さな声を発した。 その声と、流れた彼の視線を追って、その人が振り返った。