ひどいよ、からかって。 あんなキスだって余裕でできるくせに、普段は全然しないじゃん…。 樹のバカ! 心の中で悪態をついていると、樹は横になったままシートの端っこに体をつめて、丸まった肌掛け布団をキレイに整えて掛け直していた。 「ん」 布団の隅を持ち上げてこっちを見る。 へ? 「おいで」 えー… ドキドキしながら樹の隣に体を横たえると、小さな頃お母さんがしてくれたみたいに、胸のとこまで布団をかけてくれた。 「ただいま」 低く優しい声が耳元でそうささやいた。