「樹…!」 「お待たせ、部活少女」 ギュッと一瞬指先でほっぺをつままれる。 「イタタ」 わたしが痛がると、彼はヒャヒャッて笑って、もう先を歩いていく。 あわてて追いかけて行って樹の手を取ると、大きな手が私の手をすっぽりと包んでくれた。 「飯食う?」 「うん」 優しい声にも 澄んだ瞳にも いつまでたっても慣れなくて―- このパターンだといつも行く丼屋さんのチェーン店が、せめて会社からもうちょっとだけ遠ければいいのにって、毎度毎度そう思うんだ。