「そんなに比べられる?」
あらためて隣の顔をのぞきこむ。
「何せうちの親は兄貴が基準値だからさ、俺が何か出来て喜んで報告したって、下手すると『お兄ちゃんはもっとやれたよ』ってキョトンとされたりする」
「えー…やだな、それ」
「学校で教師にまでそんな目で見られたら、俺マジでグレるわ」
なんて冗談だか本気だかわかんない彼特有のテンションは、そういう境遇で形成されたのか、とかちょっと思った。
クラスでは誰よりも優秀な大淀なのにな…。
「きっとあるよ」
並んだ肩を振り返った。
「大淀がお兄さん達より優れてるところ、きっといーっぱいある!」
真顔の彼の、何事にも動じないはずの瞳が
ちらっと一瞬揺れた気がした。



