朝が待てなくて


「誘わないって決めたのに、わたしを映画に誘ってくれたのは、美里さんが結婚してしまう日…だったからだよね?

さみしくって切なくって、誰かと一緒にいたかったからでしょ?」



一瞬、樹の横顔がちらっとこっちを見て、またすぐ元に戻った。




「そんで気にしてんのか?」


「別に……気になんかしてないもん。誘ってくれてうれしかったし、樹の気持ちがそれで紛れたんなら本望だし…」


「ぶ、めちゃ気にしてるじゃん」


思わず吹き出すように彼が言った。


「わ、笑うことないでしょ!」




ハンドルから片手を離し、樹は後頭部をポリポリと掻く。


「あー…、もう誘わないって決めたのに、あっさり翻してお前のこと誘ったのは、我ながら情けねーなぁとは認めるよ」


気まずそうに樹が言った。