プールサイドをきょろきょろしながら小走りで行くと、向こうの方から可愛い声が響いてきた。
「真琴お姉ちゃーん!」
し、雫ちゃん…?
見ると、雫ちゃんが樹に手を引かれて歩いて来る。
樹の反対側の手には買い出しの白いポリ袋がぶら下がっていて、陸クンは両手にそれぞれおでんの入ったトレイを持ち、こぼさないように真剣に運んでいる最中だった。
「どした? 血相変えて」
樹が不思議そうな声で訊いた。
「よ、よかった…」
思わず駆け寄り、雫ちゃんの小さな体を抱き締めながらヘナヘナとへたり込む。
「し…雫ちゃん…どっか行っちゃったかと思って…」
安心した途端に気が緩んで、ダバダバと涙があふれ出した。



