晩ご飯の後、家族でさくらんぼを食べた。
お父さんは残業だからラップかけて冷蔵庫に入れておく。
アメリカンチェリーでもシロップ漬けでもない国産のそれは、半分紅くて半分黄色くて、つやつやキラキラ輝いている。
「さくらんぼって何でこんなに可愛いんだろうねー」
2コ下の妹が軸を持ってぶらぶらさせながらパクンといった。
「ほんとだね」
噛むとプチッと甘酸っぱい香りが、口の中に広がっていく。
「運転手さん、山形に行ってたんだ」
お母さんが発泡スチロールに貼られた“山形県産”のシールを見ながら言った。
樹は家で“運転手さん”って呼ばれている。



