「もう真琴を誘うのは、よしとこうと思ってたのにな」 ぽつんと、樹がつぶやいた。 「え…?」 「すごい展開になっちゃったもんなぁ」 いたずらっ子みたいに笑う。 「え…ホントはもう誘う気なんてなかったってこと?」 「うん、まぁ…遠慮しとこうって意味だぜ?」 彼はポリポリッと鼻の頭を掻いた。 窓の外を景色が流れていく。 次の駅名を告げるアナウンスが響いた。 「じゃあ、何でつきあおうなんて言ったの?」 低い声に驚いて、樹がわたしを見た。 「可愛いから、つい」 「………」