「悲しい?」
「まさか。むしろうれしいし」
「そうなの?」
「なんか、責任感じるんだよ。あいつが幸せになってくんないと」
借金のことがなければ結婚するはずだった人。
自分がその手で幸せにするはずだった人――
ズーンと、胸が重くなっていく。
「こっちはこっちで幸せになるか」
ポコンと、樹がわたしの頭を叩いた。
「いーよ別に…無理しなくても」
「何が?」
「じゃ訊くけど、今日わたしに断られてたらどうしてたの?」
「え? 祐二でも誘ったかな」
ほらね、わたしじゃなくてもよかったんだ。
誰でもいいから一緒に過ごして、気持ちを紛らわせたかったんだよね。