朝が待てなくて


「いや、そういうの恥ずかしいから」


「だからいいんじゃん」


「だってどんな顔して観てたらいいのかわかんないもん」



わたしが口をとがらせるとサホリンが言った。


「そのまんま恥ずかしそうな顔しとけばいいの。樹クンにムラムラッときてもらうために観るんだから」


ムラムラッて…




「手握られちゃうかもだよ」


サホリンの声がすでにウキウキと跳ねている。


「えー…そんなことするかなぁ、樹」


「して来なかったら真琴から行きなさい」


えーっ!


「あんたお花見のときだって、自分から手つなぎにいったんでしょ?」


「いったけど、あのときは歩いてたから…」




「大丈夫! そういうことしたくなるくらい胸キュンの切ない映画をチョイスしたから!」


なんてサホリンは電話の向こうで胸を張った。たぶん。