んー…
鏡の中、マスカラを持つわたしの手はなかなか動かなくて
「やっぱ、今日はいいか」
そのままそれをポーチの中にしまい込む。
いや今日じゃなかったら逆にいつ!?
と自分でも思うんだけど、結局のところ外にしていく勇気はない。
まだ下手くそだしね。
何となく照れくさくて、わたしはいつも通り色つきのリップクリームを薄く唇にひいて家を出た。
駅に向かう途中、サホリンから電話…!
「真琴、いいのあったよ!」って
一本の洋画のタイトルを告げられた。
封切りになったばっかの、たぶん切ないラブストーリー系のやつだ。
「ラブシーンもふんだんにあるからね!」
なんて彼女は言う。



