いや、映画なんて選んでる場合じゃないよ!
即刻ヘアアイロンのスイッチを入れて、わたしはバタバタと洋服を選び始める。
あ、その前にサホリンに電話。
「サホリン? あのね、樹に映画誘われた。うん、今から。そうだよ、急に。
どうしよう? 何観たらいい?」
「おー、やったじゃん!!」
と言いつつ彼女はちょっと考えて
「調べてからかけ直す」と言ってくれた。
映画のチョイスはサホリンに任せて、私は大急ぎで身支度を整える。
ちらっと、ドレッサーの上のピンクのポーチに目が行った。
その小さなポーチにはわたしのささやかなる化粧道具が入っている。
ドラッグストアで買ったやつね。



