「あれ? 大淀が女子としゃべってるなんて珍しいじゃん」 通り過ぎようとする人影が足を止めた。 「あっ」 その女の子を見て、わたしは思わず声を上げる。 「あーっ」 向こうも向こうで驚いたようにわたしを指差した。 「橘中の三山さんだよね?」 「うん、上野さん?」 「うんうん!」 「ひゃあ、同じ高校だったんだ」 長身で短髪、よく陽に焼けたボーイッシュな感じのこの女子は、中学のテニス部のブロック大会でよく対戦していた相手だ。 敵チームだからしゃべったことはほとんどないんだけどね。