「ちづっ!!」



悠が叫んだ瞬間、ぶちゅっとぶつかるように唇が触れた。



あたしを押さえつけていた力がなくなり、あたしは崩れ落ちるように近くにあった椅子に縋りつく。




「マジでキスしたぁー!!」

草野が甲高い声で叫ぶ。


「普通マジでするか!?」

久保田が興奮気味に騒ぎ立てる。



あたしは震える手で唇を拭う。





死にたいと思った。


本気で死にたいと思った。




嬌声と悲鳴の中で目が合った悠は真っ赤な顔をしている。


どうしようもなく腹が立った。



悠が庇ったりなんかしなければ。

悠が関わってこなければ!


こんなことにならなかった!!



もう嫌だ!
こんなとこにいるの!
あたしが何をしたっていうの!?もう嫌だ!!






無我夢中で教室を飛び出す。

頭は真っ白だった。



「桐谷が逃げたー!」という久保田の声と、
「ちづ!」とあたしを呼ぶ悠の声が背中から同時に聞こえた。