あらすじ

中学2年生の千鶴は学校でのイジメに耐えきれず、不登校になってしまう。口うるさい両親、なにもしない担任、自分を裏切った友達……すべてに嫌気がさし、「死にたい」と思っていた。ある夏の日、唯一心を許していた祖母が危篤に陥ってしまい、ショックを受ける千鶴の前に、ユキオという少年が現れて…?初めて恋をしたあの夏、奇跡が起きた―。時を超えた約束を通して知る、涙と命の物語。

著者コメント

こんにちは、水野ユーリです。受賞、書籍化という夢のような経験をさせていただけて、大変嬉しいです。「あの夏を生きた君へ」は、自分自身の命を、そして周りにいる人たちの命も大切にしてほしい、という思いから生まれた作品です。生きる意味や命の大切さ、家族の絆を改めて見つめるきっかけの一つになれたら幸いです。そして、まだまだ未熟な私が、ここまで辿り着くことが出来たのは、読者の皆様の温かい応援のおかげだと思います。支えてくださった全ての皆様に心から感謝します。本当にありがとうございました。

審査員コメント

【中山絵梨奈氏評】
メッセージ性が強くて、読んだあととても心に残る作品でした。主人公の一生懸命さに、ラストのほうは思わず泣いちゃいそうでした。主人公のちづには、みんなきっと共感できる部分があると思います。セリフひとつひとつが重たくて、色んなことを考えさせられる作品でした。私も大事なものに改めて気付くことができた気がします。

【藤田ニコル氏評】
一番印象に残ったことは、主人公の「死にたい、死にたいっ」という言葉です。主人公と同じように「死にたい、死にたいっ」と言っている中学生のみんなにも読んで欲しいなと思いました。教室でのいじめから戦争まで「どうなるの?どうなるの?」とどんどん読み進められました。最後のほうでは命の大切さを感じ、つい涙がでてしまいました。

【繭氏評】
「勇気」「命の大切さ」などの深いテーマが織り込まれながらもドラマチックな展開で、最後までドキドキしながら物語を楽しめました。いじめや恋愛、戦争…年齢に関係なく、生きていく上で私たちが考えなければならないことがこの作品には全部含まれています! ラストは涙せずにはいられません。幅広い世代の方に読んでいただきたいです。

【北野有希子氏評】
いじめという現実と両親への反抗心で、全てに嫌気がさしていた主人公の千鶴。そんな彼女が、ある日出会ったユキオという少年から過去の体験を聞いて変わって行く。今まで目を背けていた現実に立ち向かう勇気を、少しずつ掴んでいく過程が今の時代にふさわしく、心に残る作品でした。

【新井俊也氏評】
今回の大賞テーマである「勇気」を広く、深くとらえた作品。いじめで不登校になった主人公が、何かに打ち勝つだけでなく、もっと深い意味で、日常で生活できることの大切さに気づく「勇気」を表現している。友達、家族、おばあちゃんと身近な人だけでなく、子供たちの知らない戦争場面を有効的に生かしたストーリー展開は秀逸です。