「オイ!顔上げろよ、ブス!」


携帯電話を持ったナオミがあたしの髪を引っ張る。



その瞬間、あたしはナオミを突き飛ばして走りだしていた。


「テメェ!何すんだよっ!!」



どうにでもなれと思う。


息が切れて、脇腹が痛くて、喉が熱くて。


夏祭りへ向かう人たちに何度も何度もぶつかった。





このまま死ねたらいい。
このままあたしなんか……。



悪口も、嫌がらせも、仲間外れも耐えられる。

耐えられると思ってた。


それは、心のどこかで愛美を信じていたからだ。


一緒に笑って、一緒に泣いて、何度ケンカしてもすぐに仲直りする。

そうやって積み重ねてきた日々を…信じていたからだ。





バカバカしい。

そんなもの、捨ててやる!






拭っても拭っても溢れてくる涙で視界がゆらりと揺れる。



あたしは嗚咽なのか悲鳴なのかも分からない声を上げながら走った。





街には、もうじき夜が下りてくる。