追いかけていた人達があたしに気付かずに走り去った後、やっとあたしは自由になった。




「誰っ!?」




と言って男の方を振り向くと、見たことのある顔が目の前にあった。


確か…、こいつの名前は谷口玲(たにぐちれい)。


あたしと同じクラスで、学校一のモテ男…だったか。


いつも取り巻き連れてるし、身長も180以上あって高いし、顔は容姿端麗で綺麗だし、性格は…よく知らないけど。


モテるんだと…思う。


あたしはあんまり興味ないけど…ね。




「アレ?あんた…」




谷口玲の言葉に、少しビクッと肩が揺れる。


ばれたかな…?


いや、ばれているとしてもあたしが遠山奈緒だとはばれていないだろう。


きっと、あたしが“PEACH”だと気付いただけ。


そうだよ。


きっとそう。


あたしはそう勝手に納得し、笑顔を見せた。




「助けてくれてありがとう!じゃあね!!」




あたしは手を振りながら、そこから逃げるように走り去った。