「あの結構光ってる星、見える?」

「見えるけど…あれが何?」

「あれ、ベテルギウスっていうんだよ。」

「ベテルギウス…?」

「名前くらいなら聞いたことことあるんじゃない?」

「知らない…。」

「そっか。あ、じゃあオリオン座は?」

「それなら知ってる。」

「オリオン座の一部を成すのがベテルギウスだよ。
本当は冬の星座だけど、もう見えるんだね。」


そう言って星空を見上げるショウの表情はどことなく優しくて、夢の胸はなんだか苦しくなった。
…優しい表情の中に、何か言葉では上手く説明出来ないものを感じる。
切なさとか哀しさとか、そういう類のものを。


「おじさん。」

「なに?」

「おじさんは星が好きなの?」


今までの会話の流れなら普通の質問だったはずなのに、ショウの顔は少しだけ歪んだ。
予想しなかったリアクションに、夢の方が怯む。


「…おじさん…?」

「嫌いになりたいのに、なれないものだね。
人間って執着心が強いから。」


ショウはわけの分からない言葉だけを残した。
家に着くまで、二人の間に沈黙が流れた。