「どうしたの?」

「髪、濡れてる。」

「分かってるよ。でも今は空腹を満たすのが先だろう?」

「風邪ひくよ。」


…自分が人の身を真剣に案じていることに驚く。
別にショウが風邪をひこうがひくまいが、実際は夢に何の問題もないはずだ。


「心配してくれてありがとう。」

「…っ…!」


今一番言われたくないことをさらっと言われて、夢の顔が真っ赤に染まった。
…なんでこいつはそうやって…。


「心配なんかしてない。あんたが風邪ひいたらあたしが拾った意味がなくなるじゃん。」


なんとか正当な理由(らしきもの)を見つけて、それを口にする。
目の前のショウはというと穏やかな表情で微笑んでいる。


「…何?」

「いや…何でもないよ。」

「もうちょっと待つからちゃんと髪乾かして。」

「うん。そうする。」


…必要以上に消耗する。
そう感じたのは嘘じゃなかった。


いつもはペースを乱す側なのに、今といえば乱されていて。
それがなんだか悔しくて、夢の心は穏やかではなかった。