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「…大きいお家だね。」

「まぁね。お父さん、社長だから。」

「え?」

「お金だけは大量にあるから不自由はしてないしさせないよ。」

「…家には誰もいないの?」

「いないよ。お父さんはいつも知らない女のところだし。今日も色々頑張ってるんじゃない?」

「母親は?」

「死んだよ。あたしが中学3年の時にね。だからお父さんのは不倫でも何でもないの。」

「…確かにね。それで君…。」

「夢でいいよ。ちゃん付けとかはやめてね?」

「夢…はここでいつも一人で、お金だけは振り込まれてくる、と。」

「理解早いね。そういうこと。だからこんな高級マンションに住めるし、どんな贅沢したってお金が途切れることはないよ。」


…言っててなんだか虚しさを覚えたのは夢の方だった。
さっきから自分の口から出るのはお金のことばかり。


「夢。」

「なぁに?」

「お腹空いてない?」

「え?」

「顔がすごく疲れてるよ。何か作ろうか?」

「でも材料とか…。」

「じゃあ買い出し行こう。」

「…分かった。でもその前にお風呂入って。」

「あ、そうだった。入らせていただきます。タオルとなんか…着替えとかない?」

「…多分お父さんが昔使ってたのがあるかも。」

「じゃあそれ貸して下さい。」

「分かった。」