「じゃ、交渉成立、ってことで。」


差し出されたちょっと汚い手。
いつもの夢なら嫌な顔を隠せはしないのにこの時ばかりは違った。


素直にその手を握る。
細いのに力強くて、だけどその節々に周りの男との違いを感じさせる。


「とりあえず、お風呂入ってよね。」

「そんなに汚い?」

「臭わないけど見た目は結構汚い。」

「正直だねー君。」

「君じゃない。夢。」

「ユメ?」

「雨坂夢。おじさんは?」

「ショウ。ちなみに28歳。おじさんって言われるような年齢じゃないだろ?」

「…高校生からしたら充分おじさんだけど?」

「減らず口だね。」


ショウがふっと軽く笑う。
夢もつられて笑う。


不意にショウが真面目な顔になった。


「…今のは少し、本物に近いかも。」

「え?」

「なんでもないよ。こっちの話だから。」