「ホント、表情コロコロ変わるようになったよねー。
最初会ったときは超仏頂面だったのに!」

「別に仏頂面などではありません。
でも、もし表情が変わるようになったのだとしたら、間違いなく美雪さんの影響でしょうね。」

「え…?」

「こんなにそばにいて、影響を受けないはずがありません。」


怜がそっと、あたしの髪に触れた。
優しく微笑みながら。


こういう時の表情に、あたしは全然慣れていない。
きっと本人は無自覚なんだろうと思う。


自分がどんなに優しくて温かくて…かっこいい顔をしているか、全然分かっていない。
だからこんな風に不意打ちを食らう。


「さて、今日は次のコマで終わりでしたよね?」

「うん。怜は?」

「私も次のコマで終わりです。
ですから…少し出掛けませんか?
今日の夜の空は雲が多いようです。
天体観測には不向きですから今日は行いません。
その代わりに出掛けようかと。」

「で、出掛けるってどこに…?」

「星が見れる場所に。」

「星が見れる場所?」

「はい。
では3限が終わった後に南門の前で待ち合わせ、ということで。」

「え、あ、ちょっと!」


あたしの返事も聞かず、怜がすたすたと去っていく。
でも、断る気がさらさらないあたしも、どうかしている。


当たり前、みたいに怜のペースに巻き込まれている。