「有名どころですと…あれが北斗七星ですよ。ひしゃく、と言えば伝わりますか?」

「北斗七星くらいあたしだって知ってますー!」

「あ、そうですか。それは失礼しました。」

「あのねぇ、夏原はあたしをバカにしすぎ!夏なら多少空見たりするよ?」

「そうなんですか。それは知りませんでした。」

「ん、でも待って、どれ?どこにあんの北斗七星?」

「あそこですよ。7つ、星がひしゃくのように繋がっているでしょう?」

「えー分かんない!どれー!?」

「ですから…。」

「へっ…?」


ひやりとした、それでいて少し柔らかい何かが頬に当たる。
声が直に届いてくる…ってことは…


「ここを真っすぐ見上げてください。
あれが北極星です。北極星から左の方に…。」

「ちょちょちょ…待って待って待って!」


あたしは思い切り夏原から離れた。


「…何ですか?」

「ほっぺ!ほっぺくっついた!」

「え?あ、あぁ、言われてみればそうですね。」

「言われてみればじゃないっつーの!
ドキっとするでしょー!あたしはこういうの慣れてないんだから!」

「…こういうの、と申しますと?」

「だから!…ってべ…別に何でもない!」

「何でもある時の顔ですよ、それ。」

「もーいいっ!帰るっ!」

「え、あ…。」


何か言いかけた夏原の声を振り切って、あたしは階段を駆け降りた。
心臓がドキドキっていうよりはむしろバクバクしてる。
…上からぎゅっと掴んでも全然収まらない。
むしろ冷たい空気が肺を刺激して、余計に苦しくなる。


「…っ…はぁ…はぁ…っ…
あ…やば…これ…。」


ブランケット、そのまま持ってきちゃった…。