「誕生日おめでとう、夢。」


何の躊躇いもなく優しい声でそう言われたことになかなか理解を示せない。
だって…あり得ない。


「な…なんであたしの誕生日…。」

「掃除してたら見つけちゃったんだ、これ。」


ショウの指が挟んでいたのは、一枚の写真。


「これ…。」

「お父さんの書斎に落ちてた。
ほこりまみれで大変だったよ、掃除。」


写真はもう戻れない時をただあの頃のままに写し出す。


写真の中の夢は無邪気に微笑んでいた。これは何歳の時だったんだろうか。
父親も母親もみんな笑顔だ。
…いつから間違った、自分は。
いつからこうして…笑えなくなったの?
問いかけたって誰も答えてくれない。
だって誰も、答えは知らない。


『9.13 夢、お誕生日おめでとう』


写真の裏に書かれた文字。
…辻褄は合った。


「こういうこと。」

「そういうこと。だからプレゼント。」

「何がプレゼント?」

「この星。今日、今だけは夢のものだ。」


…そんなこと出来るわけがない。
星は誰のものにもなりはしない。
それなのにそう言って一蹴出来なかったのは…