「なんで…っ…。」

「夢には言ってないことがたくさんあるからね。
それも含めて全部話すよ。だから行こう。」

「ちょっ…!」


不意に握られた右手は掴むものを失ってどうすればいいか分からない。
いきなり恥ずかしさに襲われて、手が熱を帯びる。


「夢…?」

「ちょっ…手…!」

「あ、離した方がいい?」

「なんで手なんか繋いで…。」

「夢、こういうの初めてじゃない?」

「え?」

「顔が可愛いからすごくモテるんだろうけど、だからそこまでって感じがしてたんだ。
上辺っぽく愛されることに慣れてるって感じ。」

「…っ…そんなことっ…。」

「違ったらごめん。
でも手は俺が繋ぎたいから繋がせて。」

「…。」


こう言われたらどう抵抗すればいいのか分からない。
だって真っ当な恋愛なんて経験がない。


『好きだ』『付き合って』の言葉の後にキス。
愛も情もない、ただ欲を満たすためだけの行為が重ねられていく。


だからこそ、この触れあいの中に意味を見出そうとする行為は夢にとって居心地が悪くて仕方ない。
初めての感覚、それが怖くもある。