「夢。」

「なぁに?」

「今日のご飯の買い出しは一緒に行こうか。」

「え?」

「夢の好きなもの作ってあげるよ。」

「あたしは別になんでも…。」

「『好き』って言わないのもクセ、なのかな?」

「え?」


一瞬、身体が硬直した。
―――バレている。あたしがあえて、『好き』という言葉を口にしないこと。


「言わないんじゃなくて言えないとも取れるけど。」

「…っ…!」


…なんなんだろう…この男は。
出会ってたった1週間だと言うのに、自分がひた隠しにしていたところにズケズケと入り込んでくる。
誰にも踏み込まれないように壁を作っていたのに。


「9月13日。」

「え…?」

「9月13日、出かけようか。」

「はい?」

「大切な日、だからね。」


…知ってるはずがない。こいつが。
『あたしの誕生日』なんてものを。


「どこに?」

「内緒。」