今現在、書いた枚数は九十八枚。あと二枚書けば言われた一万回に達する。
(うわー、ガンバったなぁー)
心から思う。こんなにガンバったのは、生まれて初めてだった。今まで勉強も部活もバイトもそこそこしかしていなかった。恋愛はかなりガンバったと思っていたが、ロマンスに特訓してもらうようになってそうじゃなかったと分かった。
 相手に依存して生きていたと知った。
-幸せは男が運んでくると思っていた。だから『男に頼っていれば、幸せになれる。自分を磨く必要なんてない』と思っていた。-
過去の自分を振り返ると、あまりのヒドさに胸がズキズキと痛んだ。学校に行くのも恥ずかしくなった。
(ヤバイヤバイ!過去はもう振り返らないぞ。よーし、ヒマつぶしもかねて続きを書いちゃおう。そうしたら、今日中に終わるかもしれない!)
私は新しいルーズリーフを一枚袋から抜き出すと、灯との待ち合わせに遅刻しないよう携帯電話のアラームをセットし、書きだした。わき目も振らず書いた。
 朝で頭が冴えていたからか、ものすごくはかどった。片面一枚をキッチリ書ききった「おはよう、灯ちゃん!」
「おはよう、知佳ちゃん!」
「今日からよろしくね」
「こちらこそ、よろしく!」
おかげでますます自信が付き、学校で灯に会った時極上のスマイルを向ける事が出来た。やす子、ミサオとももっと仲良くなれ、その日はとてもいい一日を過ごす事が出来た。いや、日曜日の朝まで過ごす事が出来た。なぜならその後、波乱の展開が待ち受けていたから。