S:「このラジオ小説は、本人の意向により、その時代には婦警さんと呼んで…以上」

パチパチパチパチ…


「はい、OKで〜す! さっすが亮介さん!一発録音完成です!」

「こんな薄っぺらな私でも感動しました…こんなに短い内容なのに、よくまぁあそこまで…〜そのまま焼き付けて〜」


亮介のラジオ小説のスタジオ録音が終わり、疎(まば)らなスタッフの拍手の中で一人だけ、熱い涙を流している女性がいた…。

録音前に熱いコーヒーを持ってきた、恋愛小説大好き人間の酒井リーダーだ!

50才近いそのチームリーダーはメガネを外し、とめどなく流れる涙を抑えようとするのだが、どうしても無理なようで…、しかしその化粧の落ちた顔だけは、ハンカチで隠すようにして押さえていた…

酒井リーダーは、デューダ組で、途中から入ったからなのか、それとも男性ばかりのこの環境がよくなかったのか、年齢の割にはそこそこの出世しかしていなかった…

それとも、固い仕事の前職の婦警さんがいけなかったのか…





FIN