「お、剛志くん
そろそろ行かなくていいのか?」


モーニングのお客さんが
少なくなってきた頃
おじさんが、カウンターで
コーヒーカップを磨きながら
剛志に言った


「あ、そうっすね
どうも、ごちそうさまでした」



カウンターテーブルの上に
散らばっていた
大学の教科書やノートなどを
きちんと束ねて
カーキ色のリュックに入れた


「じゃ、行ってきます」


「あぁ、また来いよ」


カウンターの向こうから
おじさんが
ニコリとする


「んじゃな、ミア~
ちゃんと働けよ~」


ホールの一番奥で
常連のお客さんの
接客をしていた時
剛志の声が聞こえた


「え?

ちょ、剛志?! 」


私の声が届かないのか
そのまま
ドアを開け
出てってしまった


剛志ってば…

台本の練習付き合ってくれる、
って言ってたのに…