ちゆまど―世界は全て君のために―



ふと、私の持っていた荷物が僅かに光った。


「ちょうどいいですわ。通行手形はこれに致しましょう」


ぱちんと指を鳴らしたシンシアさんに応じるように、荷物の中からあるものが飛び出した。


“深緑の炎”。ラグナロク様から貰った宝石だ。


「戻りたくなったらこれに念じなさい。すぐに帰ってこれるわ」


宝石にキスをした、シンシアさんが詠唱を続ける。


【羊の道しるべはここに。迷わぬように印を刻みましょう】


空中浮遊する宝石が私のもとに。受け取りなさいと言われたので、手にとった。


「ユリウス、力ぬいて。俺の手、握っていいから」


怖くて手どころか、シブリールさんの体に抱きついた。


シブリールさんは何も言わず、私の体に手を添えてくれる。