「そのラーニャに、私、ちょっとした恩がありましたの。殺されたのは……魔導師として致し方がないこととしましても、せめて死体を手厚く埋葬したかったのです。
殺された魔導師は肉体を隅から隅まで調べられるとは知っていましたから。死体を蹂躙させる前にとっておきの召還物を帝国に仕向けましたの。しかし……」
シンシアさんの顔が曇る。
「帰ってきませんでしたわ。何があったのかと使い魔も派遣したのですが、結局は」
「それをお前はずっと繰り返していたということか」
「ええ。その間、帝国について色々調べたのですが。近頃の帝国は――王が変わってからというもの、他の国との戦争が絶え間なく続いております」
風の噂で聞いたことはあった。帝国がその占拠権を徐々に増やしているとは。


